敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……陛下も、お怪我はありませんか?」

 そう言ってから、慌てて頭を下げる。
 どこか気まずそうに視線を伏せた。

「ああ。問題ない」

 エルフナルドは落ち着いた口調で答えた。

「土砂崩れが起きた際、咄嗟にそれを避けようとしてバランスを崩し、馬から離れてしまった。結果として馬とは分離されてしまったが、怪我はない」

 一度、洞窟の奥を振り返りながら続ける。

「歩いて移動するには難しい状況だったため、近くにあったこの洞窟に身を潜めていた。夜が明けてから山を下れば、隊の者たちが探しに来るだろうと考えていたのだが……。まさかユリアまで巻き込んでしまうとはな。そしてお前も」

 エルフナルドは苦い表情を浮かべてユリアを見た後、セルビアにも視線を送った。
 その言葉に、ユリアは小さく視線を伏せた。
 
「とんでもございません。ご無事で、本当に何よりでした」

 セルビアは深く息を吐くようにして答えた。

「私の隊の者たちには、常日頃から伝えている。何か不測の事態が起きた場合、たとえ相手が私であっても、無理はするなと」

 そう言ってから、わずかに眉を寄せる。

「だからこそ、皆も夜明けを待ってから捜索に来るはずだと思っていた。だが……結果的に、お前を危険に晒してしまったな」

 その言葉に、ユリアはきゅっと眉間に皺を寄せた。

「そんな……陛下のせいでは……」

 悔しそうに、しかし小さく首を振る。

「お気遣い、ありがとうございます」

 セルビアが静かに言葉を継いだ。

「ですが、私も特に問題はございません。陛下も、ユリア様もご無事でした。どうか、お気に病まないでください」
「……ああ。すまないな」

 エルフナルドは短く礼を述べると、状況をまとめるように続けた。

「夜が明けたら、三人でこの洞窟を出よう。そうすれば、すぐに隊の者たちと合流できるはずだ」
「はい」

 セルビアが即座に応じる。
 そのやり取りを聞きながら、ユリアもまた、そっと頷いた。
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