敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ユリア様が陛下を見つけてくださったのですね。ありがとうございます」
「いえ……。陛下もお怪我はありませんでしたし、私は……何も」

 ユリアは慌てて頭を下げた。
 そして、そっとエルフナルドを見てから口を開く。

「陛下。私は、クリック様のもとへ行ってまいります。昨夜、勝手に抜けてしまいましたので……」
「ああ。行ってこい」

 短く返され、ユリアは一礼して救援テントの奥へと向かった。

 
 救護者のいるテントの奥で、クリックは救援物資の整理をしていた。

「クリック様……戻りました。昨夜は、勝手に抜け出してしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「ユリア様。おかえりなさいませ。ご無事で何よりです」

 そう言って、穏やかに微笑む。

「陛下もご無事だったようですね。どうかお気になさらないでください。こちらはすでに負傷者の処置も終えております」
「……ありがとうございます」

 ユリアが深く頭を下げると、クリックはそれ以上、何も尋ねなかった。
 その表情から、何かを感じ取ったのだろう。

 
 やがて一行は、そのまま王宮へと帰還することになった。
 門前には出迎えの者たちが並び、その中にアリシアの姿もあった。
 エルフナルドの馬に同乗するユリアの姿を見て、アリシアは一瞬、目を見開いた。

 ――ああ……。

 すぐに、すべてを理解した。
 迷いのないその横顔だった。
 王宮に戻ってきたのではない。
 ここに、もう一度立つことを選んだのだ――そんな表情だった。
 胸の奥に、静かな安堵が広がる。
 
「ユリア様……おかえりなさいませ」
「うん……アリシア、ただいま」

 ユリアは思わず駆け寄り、アリシアに抱きついた。
 アリシアは一瞬だけ驚いたように瞬きをしてから、そっとその背に腕を回す。
 言葉を交わさなくとも、この温もりが、何よりの答えだった。

 
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