敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

116 覚悟

 それからのユリアの生活は、目まぐるしく過ぎていった。
 庭園の手入れをし、薬草を選び、薬を煎じる日々。
 仕事として続けていきたいと口にした以上、かつて王宮にいた頃のように、ゆるやかな時間の流れに身を委ねてはいられない。
 ユリアは自分に言い聞かせるように、以前にも増して薬作りに力を注いでいた。

 そんな日々が三ヶ月ほど続いたある日。
 薬事室に、アリシアが顔を出した。

「ユリア様、そろそろ昼食になさいませんか? 簡単に召し上がれるものをご用意しております」
「ありがとう、アリシア。いただくわ」

 ユリアはそう答え、作業台から離れて奥のテーブルへ向かう。
 腰を下ろしたところで、アリシアが思い出したように言葉を続けた。

「そういえば……ユリア様。そろそろ晩餐会の準備を始めなければなりませんね。ドレスもお決めにならなくては」
「……晩餐会?」

 一瞬、思考が追いつかず、ユリアは目を瞬かせた。

「三日後でございます」
「えっ……もう、そんなに近いの?」

 思わず声が上がる。

「申し訳ありません。最近とてもお忙しそうでしたので、お声掛けが遅くなってしまいました。ただ、そろそろお決めにならないと……」
「ううん。私の方こそ、ごめんなさい。全然考えていなかったわ」

 ユリアは小さく首を振り、申し訳なさそうに微笑んだ。

「約二年ぶりに、ユリア様が公の場にお姿を見せられるのですから。皆さま、とても楽しみにされていますよ」
 
 そう言って、アリシアは少し楽しそうに声を弾ませる。

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