敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

117 貴方の隣に

 その日の夜、ユリアは寝室で、エルフナルドとともに紅茶を飲む準備をしていた。
 ポットからカップへ紅茶を注ぎながら、何度も言葉を飲み込む。

 ――聞いてしまっていいのだろうか。
 私は、本当にあなたの隣に立っていていいのか、と。

 紅茶を注ぐ手が、ふと止まる。
 エルフナルドの気持ちを疑っているわけではない。
 あの日、共に生きていくと決めたことにも、迷いはない。
 それでも――
 それが「王妃として」でいいのか、という問いだけが、胸の奥に残っていた。

 隣に立つ真っ当な理由が欲しくて、エルフナルドに何かあれば自分が必ずお助けすると、そう言った。
 その思いに、嘘はない。
 エルフナルドは、なかなか素直になれない私に、隣に立つ理由をくれたのだ……。

「どうした? 顔が浮かないぞ」
「い、いえ……なんでもありません」

 ユリアは感情を見破られたくなくて、ぱっと目を逸らし、そう答えた。

 ――ユリアの表情は、色を失っていたあの頃からは考えられないほど、元に戻っていた。
 それだけに、今ユリアが不安に感じていることも、手に取るようにわかってしまう。
 ……私が、不安にさせてしまっているのか。

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