敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 エルフナルドは小さく眉を寄せ、そして柔らかく声をかけた。

「ユリア。おいで」

 促されるまま、すぐそばに腰を下ろす。

「これを、受け取ってくれないか」

 差し出された小さな箱を、ユリアは両手で受け取った。
 蓋を開けると、深い青の宝石があしらわれた指輪とネックレスが、静かに光を放っている。

「……私に?」
「これをつけて、共に晩餐会に出てほしい」

 まっすぐに、逃げ場のない視線。

「私の妻として」

 その一言が、胸の奥にまっすぐ届いた。

 ――ああ、この人は。
 私が一番欲しい言葉を、迷いなく差し出してくれる。

 涙が、こぼれ落ちる。

「泣かないでくれ」

 頬に触れる手が、やさしい。

「……本当に、私でよろしいのですか」
「ああ。お前がいい。お前の代わりなど、どこにもいない」
「でも……私はもう、昔のようには歩けません。きっと、ダンスも……」
「そんなことは関係ない」

 きっぱりとした声だった。

 ――でも、そのことで、公の場に出てこなかった、この二年間に何があったのかと、詮索されたら……。
 あらぬ憶測を向けられたら……。

 そう考えただけで、胸の奥がひりつく。
 国民の前に立つことが、怖くなる。

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