敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 庭園へ向かう足取りに、ユリアの胸は不思議と軽かった。
 やがて庭に出ると、彼女たちはすぐに作業に取りかかった。
  
「今日はまず、完全に枯れてしまっている薬草を抜いてしまいましょう。もし種が残っていれば、使えるものは後で植え直せますから」

 ユリアの提案に、クリックは少し考えるように頷いた。

「……なるほど」

 その声には、納得と同時に、ほんのわずかな感心が混じっていた。 
 ユリアは抜かれた薬草を受け取り、乾いた茎や葉を確かめながら、使えそうな種を選り分けて籠に入れていった。
 およそ二時間ほど作業を続け、一区切りついたところで、クリックがユリアのそばに歩み寄った。

「ほとんどが駄目になっていると思っていましたが……こんなにも、まだ生かせるものが残っているとは」
「ええ。思ったより元気なままの薬草も多くて助かりました。ほら、植え直せそうな種も、こんなにあります」

 ユリアは籠を持ち上げ、嬉しそうに見せた。

「希望が見えてきましたね」

 その言葉に、クリックも静かに頷いた。

「ユリア様、クリック様。お茶をお持ちしましたので、少し休憩なさいませんか」

 作業の様子を見守っていたアリシアが、湯気の立つ茶器を手に声をかける。

「ありがとう、アリシア。ちょうど一息つきたかったところだわ」

 ユリアはそう言って微笑み、三人は並んで腰を下ろした。

「三人で作業したから、あっという間だったわね。ひとりだったら、何日もかかるところだったわ」
「昨日ユリア様がおっしゃっていた肥料を、今朝のうちに用意してまいりました。午後は、そちらを使われますか?」
「まあ、もう準備してくださったのですね。ありがとうございます。では、休憩のあとに早速やってしまいましょう」

 午後の作業内容について自然と話し合うユリアとクリックの様子を、アリシアは一歩引いた場所から眺めていた。
 ユリアが楽しそうにしていることに安堵しつつも、自分が入り込めない空気を、どこかで感じていた。
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