敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 翌朝。
 昨夜のことを思い返しながら、ユリアは再び小説を開いていた。

 ――この主人公のように、少しだけ求めてみたら……。
 
「……っ」
 
 一気に顔が赤くなる。

 ――私に、できるかしら……。
 けれど、勇気を出さないと……。
 
 その夜、いつものようにおやすみの口付けを受けたあと。
 ユリアは小説の一節を思い出しながら、そっと目を閉じたまま、ほんの少しだけ顔を近づけた。
 
 ――伝わってほしい……。
 言葉にはできないから。
 せめて、これくらい。
 
 わずかな間。

 エルフナルドは、一瞬、はっきりと目を見開いた。
 目を閉じたまま、わずかに顔を寄せている。
 いつもより近い距離。
 待っているのだと気付いた瞬間――
 
「……」

 喉が、わずかに動く。

 じわりと自分の頬が熱くなるのを感じながら、エルフナルドはゆっくり息を吐いた。

 ――そんな顔をされては。
 ……困ったな。

 今すぐ抱き寄せてしまいたくなるのを、どうにか堪える。

「……ん? どうした」

 ようやく出した声は、少し低かった。
 ユリアははっとして目を開けた。
 わずかに表情が曇る。
 
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