敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

強引な口付け

 ユリアとアリシアは二人、部屋で紅茶を飲んでいた。
 
「そういえばユリア様、この前の小説の続きの巻はお読みになりましたか?」
 
 目を輝かせて言うアリシア。
 
「この前二巻を読み終わったところよ。続きもそんなに面白いの?」
 
 ユリアは気になったように首を傾げた。

「また口付けの場面があるのですが、今度は少し強引で……それがまた素敵なんです!」
「強引、なの?」
 
 思わず聞き返す。
 
「はい! ぐっと引き寄せられて、そのまま……という感じで。口付けも触れるだけじゃないですよ! ああいうの、憧れてしまいますよね」
 
 アリシアはうっとりとした様子で語った。
 
「……憧れ、ね」
 
ユリアは小さく呟いた。
 
「でもユリア様には陛下がいらっしゃいますし、陛下はそういうことにもお慣れでしょうし、羨ましいなんて思う必要もないかもしれませんね」
「……ええ……」

 ユリアは少し苦笑いしながら答えた。
 アリシアは少しだけ声を潜めた。
 
「あの……陛下ってやっぱりちょっと強引な感じですか? 優しい王子様のような方も素敵ですが、ちょっと俺様気質な男性も惹かれちゃいますよね」
「エルフナルド様は、とてもお優しいわ。いつも私を気遣ってくださるの」

 ユリアがそう答えると、アリシアはぱっと顔を輝かせた。
 
「まあ! 陛下にもそんなお顔があるのですね」
 
 ――確かに、エルフナルド様はいつも私を気遣ってくださっている。
 言葉は少なくとも自分のことを大切にしてくれていることが伝わる。
 それに不満など、あるはずがない。

 口付けもいつも優しいもので。
 私がおねだりの仕草をすれば、決まってもう一度。
 時には何度も応えてくださる。

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