敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
その夜。
「おやすみ。ユリア」
優しい声。
いつもと同じ、穏やかな表情。
静かに、口付けが降りてくる。
じっと見つめれば、さらに降り注ぐ口付け……。
嬉しいはずなのに。
満たされているはずなのに。
どうしても、その先を求めてしまう。
唇が離れるその瞬間――
ユリアは思わず、その袖を掴んでしまった。
「……ユリア?」
驚いた声。
自分でも、何をしてしまったのか分からなくなる。
――どうしよう。思わず掴んじゃった。
言うの……? 本当に……?
胸が、痛いほどに高鳴っている。
ほんの少しだけ顔を上げる。
「……あの」
声が震える。
「もう一度……」
そこまでは言えた。
けれど、その先の言葉が出てこない。
代わりに、ぎゅっと袖を掴む手に力が入る。
そして、消え入りそうな声で。
「……少しだけ……違う、感じで……」
言った瞬間、自分で何を言っているのか分からなくなって、顔が一気に熱くなる。
――私、何を言っているの……。
「……違う、とは?」
エルフナルドの声が、少し低くなる。
ユリアはびくりと肩を震わせた。
――やっぱり……だめ……?
逃げようと視線を逸らす。
だがその瞬間。
ぐっと腕を引かれた。
「……っ」
逃げる間もなく、距離が詰まる。
息がかかるほどに近い。
心臓の音が、聞こえてしまいそうな距離。
「……それは、こういうことか?」
低く落ちる声。
次の瞬間、唇が重なった。
――強く。
逃げ場を与えないように。
息を奪うように。
「……ん……っ」
ユリアの肩が跳ねる。
いつもの優しい口付けとは違う。
深くて、熱くて――触れるだけでは終わらない。
頭が真っ白になる。
胸の奥だけが熱くて。
息が、うまくできない。
やがて、ゆっくりと離れると――
ユリアは息を乱したまま、その場に固まっていた。
「……ユリア」
名前を呼ばれる。
ユリアは顔を真っ赤にしたまま俯いた。
「……こういうことか?」
「……はい。あの……」
恥ずかしくて、言葉が続かない。
少しの間をおいてから、ユリアは口を開いた。
「……嬉しかったです……」
頬を染めたままそう呟く。
エルフナルドの喉が小さく動いた。
「……」
そして、再び腕の中へ引き寄せられた。
「……っ」
今度は先ほどより、ほんの少しだけ優しく。
けれど確かに熱を帯びたまま、もう一度、深く口付けが落ちた。
「おやすみ。ユリア」
優しい声。
いつもと同じ、穏やかな表情。
静かに、口付けが降りてくる。
じっと見つめれば、さらに降り注ぐ口付け……。
嬉しいはずなのに。
満たされているはずなのに。
どうしても、その先を求めてしまう。
唇が離れるその瞬間――
ユリアは思わず、その袖を掴んでしまった。
「……ユリア?」
驚いた声。
自分でも、何をしてしまったのか分からなくなる。
――どうしよう。思わず掴んじゃった。
言うの……? 本当に……?
胸が、痛いほどに高鳴っている。
ほんの少しだけ顔を上げる。
「……あの」
声が震える。
「もう一度……」
そこまでは言えた。
けれど、その先の言葉が出てこない。
代わりに、ぎゅっと袖を掴む手に力が入る。
そして、消え入りそうな声で。
「……少しだけ……違う、感じで……」
言った瞬間、自分で何を言っているのか分からなくなって、顔が一気に熱くなる。
――私、何を言っているの……。
「……違う、とは?」
エルフナルドの声が、少し低くなる。
ユリアはびくりと肩を震わせた。
――やっぱり……だめ……?
逃げようと視線を逸らす。
だがその瞬間。
ぐっと腕を引かれた。
「……っ」
逃げる間もなく、距離が詰まる。
息がかかるほどに近い。
心臓の音が、聞こえてしまいそうな距離。
「……それは、こういうことか?」
低く落ちる声。
次の瞬間、唇が重なった。
――強く。
逃げ場を与えないように。
息を奪うように。
「……ん……っ」
ユリアの肩が跳ねる。
いつもの優しい口付けとは違う。
深くて、熱くて――触れるだけでは終わらない。
頭が真っ白になる。
胸の奥だけが熱くて。
息が、うまくできない。
やがて、ゆっくりと離れると――
ユリアは息を乱したまま、その場に固まっていた。
「……ユリア」
名前を呼ばれる。
ユリアは顔を真っ赤にしたまま俯いた。
「……こういうことか?」
「……はい。あの……」
恥ずかしくて、言葉が続かない。
少しの間をおいてから、ユリアは口を開いた。
「……嬉しかったです……」
頬を染めたままそう呟く。
エルフナルドの喉が小さく動いた。
「……」
そして、再び腕の中へ引き寄せられた。
「……っ」
今度は先ほどより、ほんの少しだけ優しく。
けれど確かに熱を帯びたまま、もう一度、深く口付けが落ちた。