敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 エルフナルドはユリアの頬を撫でながら言った。
 
「どんな顔をするのか、見たくなる」
 
 その言葉に、ユリアの頬が一気に赤くなる。
 
「……っ」
 
 恥ずかしさで言葉が出ない。
 それでも。
 
「……でも」
 
 小さく、声を絞り出す。
 
「たまには……」
 
 視線を上げる。
 
「エルフナルド様からも……」
 
 そこまで言って、また言葉が途切れる。
 だが、その意味は十分に伝わっていた。
 エルフナルドは、しばらくユリアを見つめたまま動かない。
 そして――ゆっくりと距離を詰める。
 
「……そうか」
 
 低く、静かな声。
 ユリアの肩が小さく震える。
 そのまま、すぐには触れずに。
 わざと間を置く。
 
「……だが」
 
 わずかに口元を緩める。
 
「私から求めるのであれば――」
 
 ユリアの耳元に顔を寄せる。
 
「今までのようにはいかないぞ」
「……っ」
 
 ユリアの顔が一瞬で赤くなる。
 
「そ、それは……」
 
 言葉に詰まる。
 さらに、追い打ちをかけるように。
 
「全部、受け止めきれるか?」
 
 低く、囁くような声。
 逃げ場のない距離。
 ユリアは何も言えない。
 けれど――
 小さく、こくりと頷いた。
 その瞬間。
 ぐっと腕を引かれる。

「……っ」

 そのまま唇が重なった。
 優しいだけでは終わらない。

「……っ、ん……」

 どれほど繰り返されたのか。
 ようやく離れた頃には、ユリアはすっかり力が抜けていた。
 
「……だから言っただろう」
 
 少しだけ息を乱しながら、エルフナルドが呟く。
 
「今までのようにはいかないと」
 
 ユリアは何も言えない。
 ただ、顔を真っ赤にしたまま、胸元に額を押し当てる。
 心臓の音が、うるさいほど響いていた。
 
「……おやすみ」
 
 最後は、いつものように。
 優しく抱きしめられる。
 けれど――
 その夜、ユリアがすぐに眠れなかったのは。
 言うまでもなかった。
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