敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 すっかり日も暮れた頃、薬事室の扉が開かれた。

「やはりここだったか」

 小さくため息をつきながら、エルフナルドが入ってきた。
 
「え、エルフナルド様? どうして?」
「……どうしてではない。もう日が暮れているぞ。そろそろやめにしてはどうだ?」
 
 ユリアは時計を見て、びっくりしたように立ち上がった。
 
「も、もうこんな時間ですか? も、申し訳ありません!」
「いや、構わない。ただ……セルビアが何度も声をかけようとしていたようだ」

 エルフナルドは、少し離れた場所にいたセルビアへ視線を向けた。
 セルビアは小さく頭を下げると、申し訳なさそうに口を開いた。
 
「何度も声をおかけしようと思ったのですが、あまりにお二人が盛り上がっていらっしゃったので、お邪魔するのも申し訳なく……」
「そうだったの……。ごめんね、セルビア。困らせてしまったわね」

 ユリアも申し訳なさそうに頭を下げた。
 
「陛下、ユリア様。申し訳ありません。私が時間を気にかけるべきでしたのに。ついつい」

 クリックがたまらず口を開いた。
 
「いや、構わない。……ただ、少し気になっただけだ。さあ帰ろう?」
「は、はい! ではクリック様、本日はありがとうございました。続きはまた明日、よろしくお願いします」

 ユリアはクリックに頭を下げると、椅子から立ち上がった。
 
「そう、慌てなくてもよい。ゆっくり歩け」

 エルフナルドはユリアの歩みに合わせるように、そっと手を差し出した。
 
「はい。ありがとうございます」

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