敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
やがてクリックはひとり視線を落とし、庭園の一角に並び始めた薬草へと目を向ける。
けれど、脳裏に浮かんだのは、隣で土に触れていたユリアの姿だった。
――……不思議な方だ。
知識があるからではない。
手際がいいからでもない。
土に触れるその仕草が、あまりにも迷いがなくて。
育てることを、結果ではなく過程ごと楽しんでいるように見えた。
――王妃、という立場を、忘れてしまいそうになる。
それが危ういことだと、分かっていないわけではない。
それでも――目を離せないと思ってしまう自分がいた。
「あ、そういえば……」
ふと、クリックが思い出したように口を開く。
「陛下は、ユリア様がこの庭園を手入れされていることについて、何かおっしゃっていましたか?」
「え……?」
一瞬、ユリアは言葉を失った。
「い、いえ……特には……」
そう答えながら、内心では胸がどくりと鳴った。
――どうしましょう。
薬草をどう復活させるか、そればかりに気を取られていて、陛下に許可を得ることをすっかり忘れてしまっていたわ。
それに、そもそもなかなかお会いする機会もないのに、どう切り出せばいいのかしら……。
部屋に戻ったら、まずはアリシアに相談してみなくちゃ。
その日の夜、自室に戻ったユリアは、そわそわしながらアリシアに尋ねた。
「ねえ……庭園のことなんだけど。私、陛下にお許しをいただくのを、完全に忘れていて……大丈夫かしら?」
「……やはり、そうだと思っていました」
アリシアは小さく息を吐き、苦笑しながら答える。
「ユリア様が最初に庭園へ行かれた日に、側近のカリル様を通して事前に確認しております。好きに使って構わない、とのことでしたよ」
「聞いてくれていたのね! 本当に、さすがアリシアだわ」
「褒めても何も出ませんよ。それに……ご報告しなかったのは、ユリア様が庭園のことで頭がいっぱいだったからです。もし許可が下りていなくても、どうせ行かれていたでしょう?」
「……ごもっともです」
ユリアはぺろりと舌を出して、少しおどけてみせた。
「でもね、今日でほとんど手入れは終わったの。あとは水やりをして成長を待つだけ。次は、薬草から薬を作ってみようと思ってるのよ」
生き生きと語るユリアを、アリシアは微笑ましく見つめていた。
けれど、脳裏に浮かんだのは、隣で土に触れていたユリアの姿だった。
――……不思議な方だ。
知識があるからではない。
手際がいいからでもない。
土に触れるその仕草が、あまりにも迷いがなくて。
育てることを、結果ではなく過程ごと楽しんでいるように見えた。
――王妃、という立場を、忘れてしまいそうになる。
それが危ういことだと、分かっていないわけではない。
それでも――目を離せないと思ってしまう自分がいた。
「あ、そういえば……」
ふと、クリックが思い出したように口を開く。
「陛下は、ユリア様がこの庭園を手入れされていることについて、何かおっしゃっていましたか?」
「え……?」
一瞬、ユリアは言葉を失った。
「い、いえ……特には……」
そう答えながら、内心では胸がどくりと鳴った。
――どうしましょう。
薬草をどう復活させるか、そればかりに気を取られていて、陛下に許可を得ることをすっかり忘れてしまっていたわ。
それに、そもそもなかなかお会いする機会もないのに、どう切り出せばいいのかしら……。
部屋に戻ったら、まずはアリシアに相談してみなくちゃ。
その日の夜、自室に戻ったユリアは、そわそわしながらアリシアに尋ねた。
「ねえ……庭園のことなんだけど。私、陛下にお許しをいただくのを、完全に忘れていて……大丈夫かしら?」
「……やはり、そうだと思っていました」
アリシアは小さく息を吐き、苦笑しながら答える。
「ユリア様が最初に庭園へ行かれた日に、側近のカリル様を通して事前に確認しております。好きに使って構わない、とのことでしたよ」
「聞いてくれていたのね! 本当に、さすがアリシアだわ」
「褒めても何も出ませんよ。それに……ご報告しなかったのは、ユリア様が庭園のことで頭がいっぱいだったからです。もし許可が下りていなくても、どうせ行かれていたでしょう?」
「……ごもっともです」
ユリアはぺろりと舌を出して、少しおどけてみせた。
「でもね、今日でほとんど手入れは終わったの。あとは水やりをして成長を待つだけ。次は、薬草から薬を作ってみようと思ってるのよ」
生き生きと語るユリアを、アリシアは微笑ましく見つめていた。