敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
17 静かな夜
"世継ぎは作らない"
そう告げられていたとはいえ、寝室に呼ばれたことで、ユリアがまったく何も考えずにいられたわけではなかった。
王妃として、この国に嫁いだ以上、いつかは向き合わなければならない役目があることも、理解していた。
それが今夜なのか、それとも、まだ先なのか――
寝室に足を踏み入れた瞬間、婚姻の儀の夜の記憶が、どうしても脳裏をよぎる。
あのときも、こうして静かな部屋で、一人椅子に座って待っていた。
色々と考えを巡らせていたせいで、胸の奥は落ち着かず、指先がわずかに震えていた。
怖くないと言えば、嘘になる。
それでも――逃げることは許されない立場だということを、ユリアはよく分かっていた。
やがて、エルフナルドがベッドに横になったのを確認し、部屋が静まり返る。
何かを言われることも、呼ばれることもない。
――今夜も、何もないのだ。
そう理解した瞬間、張り詰めていたものが、ふっと緩んだ。
安堵と同時に、胸の奥をかすめる小さな痛み。
本来なら王妃として望むべきことではないのに、ほっとしてしまう自分がいた。
「……おやすみなさいませ」
小さく呟き、ユリアは長椅子に横になった。
庭園での作業に加え、慣れない緊張が続いたせいか、身体は想像以上に疲れていた。
目を閉じると、意識は驚くほどあっさりと遠のいていく。
室内には静かな寝息だけが残り、時がゆっくりと過ぎていった。
そう告げられていたとはいえ、寝室に呼ばれたことで、ユリアがまったく何も考えずにいられたわけではなかった。
王妃として、この国に嫁いだ以上、いつかは向き合わなければならない役目があることも、理解していた。
それが今夜なのか、それとも、まだ先なのか――
寝室に足を踏み入れた瞬間、婚姻の儀の夜の記憶が、どうしても脳裏をよぎる。
あのときも、こうして静かな部屋で、一人椅子に座って待っていた。
色々と考えを巡らせていたせいで、胸の奥は落ち着かず、指先がわずかに震えていた。
怖くないと言えば、嘘になる。
それでも――逃げることは許されない立場だということを、ユリアはよく分かっていた。
やがて、エルフナルドがベッドに横になったのを確認し、部屋が静まり返る。
何かを言われることも、呼ばれることもない。
――今夜も、何もないのだ。
そう理解した瞬間、張り詰めていたものが、ふっと緩んだ。
安堵と同時に、胸の奥をかすめる小さな痛み。
本来なら王妃として望むべきことではないのに、ほっとしてしまう自分がいた。
「……おやすみなさいませ」
小さく呟き、ユリアは長椅子に横になった。
庭園での作業に加え、慣れない緊張が続いたせいか、身体は想像以上に疲れていた。
目を閉じると、意識は驚くほどあっさりと遠のいていく。
室内には静かな寝息だけが残り、時がゆっくりと過ぎていった。