敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった





 ――ドスンッ。

 重い音が響いた瞬間、エルフナルドは反射的に剣を掴み、ベッドから跳ね起きていた。
 暗闇の中でも、身体は即座に戦場の感覚を取り戻す。
 
 敵襲か、それとも――。 

 鋭く視線を走らせた先から、聞こえてきたのは、規則正しい寝息だった。
 拍子抜けしたように眉をひそめ、目を凝らした。
 すると、長椅子の脇に転がる小さな影があった。
 ユリアが寝返りを打った際に転げ落ちたのだろう。
 剣を鞘に収め、エルフナルドは深くため息をついた。

「……おい」

 低く声をかけても、ユリアは目を覚まさない。
 身じろぎひとつせず、眠りは深いようだった。
 このまま放っておくわけにもいかず、エルフナルドは痺れを切らして彼女に近づいた。
 抱き上げた瞬間、思ったよりもずっと軽い身体に、わずかに眉が動いた。
 そっと長椅子の上に戻そうとした、その時、眠ったままのユリアが身じろぎし、再び床へ落ちそうになる。

「……っ」

 考えるより早く腕が伸び、落ちかけた身体を受け止めていた。
 そのあまりにも無防備な姿に、今度は思わずため息が零れた。
 そして観念したように、再びユリアを抱え上げると、先ほどまで自分が横になっていたベッドへ運び、その身体を静かに寝かせた。
 そんなことが起きているとは知る由もなく、ユリアは変わらず穏やかな寝息を立て、気持ちよさそうに眠り続けている。

「……こいつは本当に、王女だったのか」

 エルフナルドは小さくそう呟き、眠るユリアを見下ろした。
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