敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
ミラベルは、頭の先から足の指先まで磨き上げられたような艶やかな肌に、光を受けて輝く金髪。
胸元が大きく開いた紫のドレスを、嫌味なく、むしろ誇るように着こなす妖艶な女性だった。
一方のユリアは、サーモンピンクの可愛らしいドレスに身を包んでいるものの、胸元はきっちりと留められている。
膨らみも控えめで、侍女に工夫してもらっているとはいえ、大人の女性というよりは、どうしても少女の域を出ない印象だった。
何も言い返せずに黙り込むユリアを見て、ミラベルはさらに言葉を重ねる。
「エルフナルド様は、色気のある女性がお好きなの。ここにいる誰もが、一夜だけでもお相手していただきたくて努力しているのよ? それなのに――」
声には、次第に苛立ちが滲み、口調も荒くなる。
「あなたみたいな人が、いきなり王妃になって……しかも抱かれているなんて……本当に腹立たしいわ」
その言葉に、ユリアは息を呑んだ。
「……あの」
ユリアは胸の奥に広がる戸惑いを押さえ込み、意を決して口を挟んだ。
「先ほどから仰っていますが……"一夜を共にする"というのは、世継ぎのお話なのでしょうか? 皆様は、陛下の世継ぎを望んでいらっしゃるのですか?」
ミラベルは一瞬、言葉を失ったように目を見開いたかと思うと、次の瞬間、呆れと嘲りが入り混じった視線を向けてきた。
「……本当に、何も知らないのね」
深くため息をつき、吐き捨てるように言葉を続ける。
「世継ぎだけの話じゃないわ。抱かれること、そのものの話よ。女に生まれたなら、それを求めるのは当然でしょう? 一度でも味わえば、もう元には戻れない。忘れたくても、忘れられなくなるものなのよ」
鋭い視線で睨みつけられ、ユリアはようやく、この場で語られている“意味”を理解した。
だが――自分が抱かれてなどいないことも、世継ぎを作るつもりがないことも、ここで口にすることは許されていない。
何も言えずに黙り込むユリアを一瞥すると、ミラベルは興味を失ったかのように踵を返した。
その背中を、ユリアはただ立ち尽くしたまま見送るしかなかった。
胸元が大きく開いた紫のドレスを、嫌味なく、むしろ誇るように着こなす妖艶な女性だった。
一方のユリアは、サーモンピンクの可愛らしいドレスに身を包んでいるものの、胸元はきっちりと留められている。
膨らみも控えめで、侍女に工夫してもらっているとはいえ、大人の女性というよりは、どうしても少女の域を出ない印象だった。
何も言い返せずに黙り込むユリアを見て、ミラベルはさらに言葉を重ねる。
「エルフナルド様は、色気のある女性がお好きなの。ここにいる誰もが、一夜だけでもお相手していただきたくて努力しているのよ? それなのに――」
声には、次第に苛立ちが滲み、口調も荒くなる。
「あなたみたいな人が、いきなり王妃になって……しかも抱かれているなんて……本当に腹立たしいわ」
その言葉に、ユリアは息を呑んだ。
「……あの」
ユリアは胸の奥に広がる戸惑いを押さえ込み、意を決して口を挟んだ。
「先ほどから仰っていますが……"一夜を共にする"というのは、世継ぎのお話なのでしょうか? 皆様は、陛下の世継ぎを望んでいらっしゃるのですか?」
ミラベルは一瞬、言葉を失ったように目を見開いたかと思うと、次の瞬間、呆れと嘲りが入り混じった視線を向けてきた。
「……本当に、何も知らないのね」
深くため息をつき、吐き捨てるように言葉を続ける。
「世継ぎだけの話じゃないわ。抱かれること、そのものの話よ。女に生まれたなら、それを求めるのは当然でしょう? 一度でも味わえば、もう元には戻れない。忘れたくても、忘れられなくなるものなのよ」
鋭い視線で睨みつけられ、ユリアはようやく、この場で語られている“意味”を理解した。
だが――自分が抱かれてなどいないことも、世継ぎを作るつもりがないことも、ここで口にすることは許されていない。
何も言えずに黙り込むユリアを一瞥すると、ミラベルは興味を失ったかのように踵を返した。
その背中を、ユリアはただ立ち尽くしたまま見送るしかなかった。