敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「先王陛下が、何かおっしゃられたのですか?」
カリルは、エルフナルドが険しい表情のまま執務を続けている様子を、しばらく黙って見守っていた。
だが、一時間近く経っても変わらないため、意を決して声をかけた。
「……ずっと怖い顔をされていますが」
「父上に、世継ぎはまだかと催促された。まだ三ヶ月しか経っていないのに……少し早いとは思わないか?」
「いずれ言われるとは思っていましたが……確かに、早い気はしますね」
カリルは手を止め、少し考え込む。
「早く王太子を産んで安心したい、と言っていたが……それだけではない気がするんだ」
「……と、言いますと?」
エルフナルドの表情が険しくなるのを見て、カリルもまた真剣な顔で向き直った。
「父上は、どうも……あいつに固執しているように思える」
「あいつ、というのは……ユリア様ですか? ですが、なぜ……」
「まだ確証はない。だが、嫌な予感がする。……ユリアのことを、少し調べてみてくれないか?」
少しの沈黙の後、カリルは静かに頷いた。
「……承知しました。こちらで調査してみます」
一礼して執務室を出ていくカリルを見送り、エルフナルドは再び机に向かった。
しかし、頭は上の空で、仕事に集中できない。
――父上からの催促がなければ、あいつとは距離を保ちつつ、第二夫人の候補を探すつもりだった。
だが今は、下手に動かない方がいい。
――父上は、俺とあいつの仲を疑ってはいないようだった。
ならば、父上の考えが見えるまでは……。
このまま、"仲睦まじい王妃と王"を演じておくべきかもしれない……。
先日の舞踏会以降、どことなくユリアと距離を取っていたエルフナルドだったが、先王との会話をきっかけに、ユリアと寝室を共にする回数を増やそうと考え、早速ユリアを呼び出した。
――しかし、舞踏会の夜の出来事が、どうしても頭から離れなかった。
カリルは、エルフナルドが険しい表情のまま執務を続けている様子を、しばらく黙って見守っていた。
だが、一時間近く経っても変わらないため、意を決して声をかけた。
「……ずっと怖い顔をされていますが」
「父上に、世継ぎはまだかと催促された。まだ三ヶ月しか経っていないのに……少し早いとは思わないか?」
「いずれ言われるとは思っていましたが……確かに、早い気はしますね」
カリルは手を止め、少し考え込む。
「早く王太子を産んで安心したい、と言っていたが……それだけではない気がするんだ」
「……と、言いますと?」
エルフナルドの表情が険しくなるのを見て、カリルもまた真剣な顔で向き直った。
「父上は、どうも……あいつに固執しているように思える」
「あいつ、というのは……ユリア様ですか? ですが、なぜ……」
「まだ確証はない。だが、嫌な予感がする。……ユリアのことを、少し調べてみてくれないか?」
少しの沈黙の後、カリルは静かに頷いた。
「……承知しました。こちらで調査してみます」
一礼して執務室を出ていくカリルを見送り、エルフナルドは再び机に向かった。
しかし、頭は上の空で、仕事に集中できない。
――父上からの催促がなければ、あいつとは距離を保ちつつ、第二夫人の候補を探すつもりだった。
だが今は、下手に動かない方がいい。
――父上は、俺とあいつの仲を疑ってはいないようだった。
ならば、父上の考えが見えるまでは……。
このまま、"仲睦まじい王妃と王"を演じておくべきかもしれない……。
先日の舞踏会以降、どことなくユリアと距離を取っていたエルフナルドだったが、先王との会話をきっかけに、ユリアと寝室を共にする回数を増やそうと考え、早速ユリアを呼び出した。
――しかし、舞踏会の夜の出来事が、どうしても頭から離れなかった。