敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 それから数週間が経っても、ユリアについて決定的な手掛かりは、何一つ掴めていなかった。
 その一方で、ユリアと寝室を共にする回数は増え、三日に一度ほどの頻度になっていた。
 そんな生活にも慣れ始めた頃、エルフナルドの執務室にカリルが入ってくる。

「陛下、失礼いたします。あの……」

 言い淀むカリルに、書類を読んでいたエルフナルドは手を止め、顔を上げた。

「どうした? 何か有力な情報でも掴めたのか?」
「いえ……ユリア様の件で、特に有益な情報は入っておりません。お時間がかかってしまい、申し訳ありません……」

 カリルは申し訳なさそうに頭を下げる。

「……そうか。では、何の用だ?」
「実は……ユリア様の侍女より、陛下にお伺いしたい事があると頼まれまして……」
「あいつが、俺に頼み事とは珍しいな」

 エルフナルドは書類を机に置き、カリルの話に耳を傾けた。

「王宮からほど近い市場へ行ってみたいとのことです。許可をいただけないかと……」
「市場に? 何故だ? 新しいドレスでも買うつもりか?」

 意外そうに問い返す。

「庭園に植える花の苗を、ご自身で選びたいのだそうです」
「……苗?」

 予想外の答えに、エルフナルドは思わず聞き返した。

「以前、陛下が許可なさっていた庭園に植えるとのことです」
「ああ……兄上の庭園があった場所か。行ってきて構わないと伝えてくれ」

 そう言って、再び書類を手に取る。

「よろしいのですか? 陛下はお許しにならないかと思っておりました」

 驚いた様子でカリルが言う。

「今のところ、怪しい情報は何も出ていない。……普段と違う行動をさせれば、何か分かることもあるかもしれないだろう?」
「なるほど……確かに、そうかもしれません」

 カリルは納得したように何度か頷いた。

「市場へ行く際には護衛を付けろ。護衛騎士の手配を頼む」
「かしこまりました」

 カリルは一礼し、執務室を後にした。
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