敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 王宮の門前には出迎えの一団が待っており、その中に、ひときわ目を引く女性の姿があった。
 
 ルトアの王女、キャロル姫である。

「この度は急なご招待となり、申し訳ありませんでした。ようこそお越しくださいました」

 キャロルは優雅な所作で、ゆっくりと一礼する。
 朝の光を浴びて、金色の髪が柔らかく輝いていた。
 
「キャロル姫、招待に感謝する。紹介しよう。こちらが王妃のユリアだ」

 エルフナルドはそう言って、ユリアを前へと促した。
 初めて名を呼ばれたことに、ユリアは思わず小さく肩を跳ねさせたが、すぐに気を取り直してエルフナルドの隣に並ぶ。

「ユリアと申します。この度はご招待いただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」
「ユリア様! 私、同じくらいの歳の方が周りにあまりいなくて……。ぜひ仲良くしてくださいね」

 キャロルは太陽のような明るい笑顔で手を差し伸べた。
 ユリアはその手を取ると、疲れで少し重くなった体も、ほんの少し軽くなるのを感じた。
 とても明るく、可愛らしい女性だった。
 
 ルトアまでの移動で疲労も溜まっていたため、一行は明日の晩餐会に備え、この日は休息を取ることになった。
 エルフナルドとユリアは同じ部屋へ案内された。
 中に入ると、アルジール国の寝室と遜色ないほど、広く立派な部屋が広がっていた。

「私はまだ用がある。お前は先に休んでいろ」

 そう言い残し、エルフナルドは部屋を出て行った。
 一人になったユリアは、用意されていた浴室を借り、その後長椅子に腰を下ろした。
 エルフナルドが戻るまで起きていようと思っていたが、長時間の馬移動で疲れが溜まっていたのか、いつの間にか眠りに落ちてしまう。
 やがて部屋に戻ってきたエルフナルドは、長椅子のそばで床に落ちたまま眠るユリアの姿を目にした。

「……またか」

 呆れたように呟きながらも、手慣れた様子でユリアを抱き上げ、ベッドへ運ぶ。
 ぐっすりと眠るその寝顔を、エルフナルドは隣に横になりながら、しばらく見つめていた。
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