敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 その瞬間、ユリアの目に涙が込み上げた。
 泣くまいと必死に目を見開き、何度も深呼吸をする。
 そんなユリアの様子を見て、サリトスはもう一度、そっと頭を撫でた。

「見ているのも、俺だけだ……」

 その言葉が決定打だった。
 ユリアは堪えきれず、ぼろぼろと涙を零した。
 サリトスは、涙を流すユリアの姿が周囲から見えないよう、自分の上着をそっとユリアの頭にかけた。

 ユリアは、エルフナルドを好きだと認めてしまった自分の感情を、まだ受け止めきれずにいた。
 認めてしまえば、それはきっと自分を苦しめるだけだ。
 先ほどの令嬢たちの言葉が、頭から離れない。
 いずれ迎えられるであろう、別の妻。
 その人とエルフナルドを、同じ立場で見続けるのか。
 それとも、自分は妻ですらなくなるのか――。

 考えれば考えるほど、心は深く沈んでいった。
 
 エルフナルドはキャロルとの話を終え、会場へ戻ると、無意識にユリアを探していた。
 人の流れの中に見当たらず、視線を巡らせた先で、庭園へ続く扉の向こうにユリアの姿を見つける。

 ――あそこにいたのか。

 だが、その隣にサリトスがいることに気付いた瞬間、足が止まった。
 庭園へ出るのをやめ、少し離れた場所から様子を窺う。
 ユリアの肩が小刻みに震えている。
 泣いているのだと、すぐに分かった。
 そして――サリトスが慰めるように、ユリアの頭を撫でた。
 エルフナルドはその光景から目を離せず、ただじっと見つめていた。
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