敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「まあまあ、そんなに苛つくな。カリルだって心配してるんだ。で、そもそもお前はあの舞踏会の夜、何にそんなに苛ついていた? それで結局、姫に強く当たって喧嘩でもしたんだろ?」

 サリトスは改めて問いかけた。

「……晩餐会の夜、お前たちが二人でこそこそ庭園で話していただろう。だから、王妃としての自覚を持てと言っただけだ。あれは感情の問題じゃない」
 
 エルフナルドは視線を逸らしながら答えた。
 サリトスとカリルは顔を見合わせる。

「……で? お前、いつから姫のこと好きだったんだ?」

 拍子抜けしたような顔で、サリトスが言った。

「何故そういう話になる。俺は王妃の立場を考えて言っただけだ。妙な噂が立てば困る。父上の耳に入ってもな」

 眉間に皺を寄せて言い切るエルフナルドに、サリトスは深くため息をついた。

「……お前、自覚なしか。姫も姫だが、お前も相当だぞ……」
「何をブツブツ言っているんだ。……ところで、あいつの事ではないんだが……」

 エルフナルドはそこまで言うと、口を閉ざし、険しい表情のまま黙り込んだ。
 サリトスとカリルは、再び顔を見合わせてからエルフナルドに視線を戻した。

「ルトアでの最後の夜に、キャロル姫から結婚を打診された」
「「えっ!!」」

 思わず声を上げたサリトスとカリルに、エルフナルドは小さく息を吐いた。

「それで……どうされたのですか?」

 恐る恐る、カリルが続きを促す。

「……断った。第ニ夫人を探していたのは確かだ。だが、どうにも気が進まなかった。理由は……自分でも分からない」

 言い切るようでいて、どこか歯切れの悪い口調だった。

「……やっぱり姫が、関係しているからなんだろ?」

 サリトスが思わずそう口にすると、エルフナルドは一瞬口を開きかけたが、何も言えず、ただ黙ったまま視線を落とした。

「まったく……素直じゃないな」

 サリトスは肩をすくめると立ち上がった。

「そろそろ出発する。次に俺が帰ってくる頃には、少しは素直になっておけよ」

 そう言い残し、サリトスは執務室を後にした。

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