敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 その頃、ユリアとアリシアは自室で、この数日間のルトア国での出来事を語り合っていた。

「では、行きの道のりは大変だったのですね」
「そうなの。でも意外と楽しかったのよ」

 ユリアは、ルトア国へ向かう道中で野宿をしたことを、身振りを交えながら話した。

「山で野宿だなんて……他のご令嬢でしたら耐えられないでしょうに。ユリア様は本当にすごいですわ」

 アリシアは感心したように、何度も頷いた。

「ルトア国は、どんなところだったのですか?」

 興味津々な様子で、アリシアが尋ねる。

「ルトア国は……そうね……庭園がとても素敵だったわ。私が見たことのない花もたくさん咲いていたの。やっぱり国が変わると、咲く花も違うのね。育ててみたい花もあったんだけど……頂いてくるのを忘れてしまったわ」

 ユリアは少し残念そうに呟いた。

「私も見てみたかったです! キャロル様はどんなお方でしたか?」

 なおも身を乗り出すアリシアの言葉に、キャロルの名を聞いた瞬間、ユリアの表情が曇った。

「……キャロル様は……とてもお綺麗なお方だったわ。陛下とも……とても親しそうで……」

 そこまで言って、ユリアは言葉を切った。
 帰国の日、エルフナルドとキャロルの間に流れていた、あの気まずい空気を思い出したからだった。

「……でも、陛下とユリア様も、ルトア国に行かれていた数日間で仲を深められたのではありませんか? 今日ご帰国された時、おふたりの雰囲気がとても良く見えましたけど」

 アリシアはきょとんとした顔で、そう言った。

「え!? 本当にそう見えた? 私は……とても気まずくて、お顔も見られなかったのに……」

 ユリアは恥ずかしそうに俯いた。

「どうして、気まずくなられるのですか? 何かあったのですか?」

 躊躇のない直球の質問に、ユリアは思わず言葉を失った。

「あ……いや……その……何でもないわ……」
「えー、気になるじゃないですか!」

 アリシアは食い下がるように言った。

「ほんとに何でもないのよ! はい、もうこの話はおしまい! 私、庭園の様子を見に行ってくるわ」

 ユリアは半ば強引に話を切り上げると自室を出た。
 そして数日間手を付けられなかった庭園へ向かい、考えないようにしながら、静かに手入れを始めた。
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