敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

41 書庫の静寂

 数日後、ユリアが書庫に入ると、奥の長机に何冊も本が積み重ねられているのを見つけた。
 何事かと思って近づいてみると、クリックが側に立っていた。

「クリック様、この大量の本は何かに使われるのですか?」

 ユリアは大量の本を見ながら、クリックに尋ねた。

「明日、市場の医局で勉強会があるのですが、そこで使う本なんです。これを今から医局へ運ぼうと思っているんですよ」

 クリックは額の汗を拭いながら答えた。

「この量を全て持っていかれるのですか?」

 ユリアは驚いて、もう一度長机にある本を見た。

「量が多いのは想定しておりましたので、馬車を手配してあるんですよ。だから馬車まで運べば後は大丈夫なんです」
「そうだったんですね! では私も門までお手伝いいたしますよ」

 ユリアはそう言って、山積みになった本の山を持ち上げた。

「いけません! ユリア様にそんなことをお願いするわけには!!」

 ユリアが持ち上げた本の山を取ろうと、慌ててクリックが近付いた。

「私、力持ちなんですよ。これくらいの重さでしたら大丈夫ですから! ニ人でぱっぱと運んでしまいましょう!!」

 ユリアはクリックに本の山を渡すことなく、門の方へとスタスタと歩いて行った。

「……ありがとうございます。では門までお願いいたします」

 クリックは頭を下げると、自分も本の山を持って門まで一緒に運んだ。
 ニ人で協力して本を運び、三往復ほどする頃には全ての本を運び終わった。

「ユリア様ありがとうございました。 とても助かりました。」

 最後の本を積み入れると、クリックがユリアにお礼を言った。

「とんでもございません。 いつも助けていただいていますので、お互い様ですよ」

 ユリアはニッコリと笑いかけた。

「ではユリア様。私はこれで失礼いたします」

 クリックはそう言ってユリアに頭を下げ、馬車に乗り込もうとした。
 その瞬間、側に立っていた門番が、突然クリックに襲いかかった。

 ドンッッ!!

 あまりに一瞬の出来事で、ユリアは何が起きたのか理解できなかった。
 しかし、クリックがその場に崩れ落ちるように倒れたのを見て、事態を悟った。

「クリック様!! クリック様!! 大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」

 ユリアは駆け寄り、必死にクリックの名を呼んだ。

< 98 / 120 >

この作品をシェア

pagetop