敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「うぅ……」
クリックは腹部を押さえ、苦しげにうずくまっていた。
その指の隙間から、大量の血が溢れ出している。
襲った男は逃げる様子もなく、クリックを見下ろしていた。
「おい。早くしろ!」
男が怒鳴り声を上げた。
ユリアは意味が分からず、思わず男を見上げる。
「……な、何をおっしゃっているのですか……?」
問いかけると、男は苛立ったようにユリアを睨みつけた。
「分からないのか? 早く治せと言っているんだ」
その言葉に、ユリアの胸が強く脈打った。
男とクリックを交互に見やり、ほんの一瞬、考え込む。
しかし、クリックの苦しげな呻き声にはっとして、再び傷口に目を落とした。
出血量は多いが、刃の入り方から見て、致命的に深い傷ではなさそうだ。
「クリック様、大丈夫です。傷は深くありません。すぐ手当ていたしますから」
ユリアはそう言って、自分の服の裾を裂き、腹部にきつく巻きつけた。
「……まさか、こいつ、本当に……」
男が独り言のように呟いたが、ユリアの耳にはほとんど届かなかった。
彼女の意識は、ただクリックを助けることだけに集中していた。
その時、後方からもう一人の男が現れ、襲撃した男に声をかけた。
「おい、人が来る。もう行くぞ!」
「だが、こいつ、まだ——」
「もういい。急げ!!」
バタバタッ
護衛たちが異変に気付き、こちらへ向かってくる足音が響く。
男たちはそれに気付くと、慌ただしくその場を逃げ去っていった。
「王妃様!! どうなされたのですか!?」
血相を変えた護衛騎士の一人が駆け寄ってきた。
「門番の男に、クリック様が襲われました。襲った男たちは、あちらへ逃げて……とりあえず、クリック様を——」
そう言いかけたところで、クリックが痛みに耐えながら身体を起こした。
「ユ、ユリア様……。おかげで出血は、ほぼ止まっています……。このまま市場の医局で、残りの手当てを受けますので……ユリア様は王宮に……」
「そんなこと、できません! 私も行きます!」
「ですが……」
渋るクリックを制するように、護衛騎士が口を挟んだ。
「とにかく参りましょう。他の護衛も呼びます。王妃様は我々がお守りしますので、ご安心ください」
護衛騎士はクリックを支え、馬車へと乗せた。
ユリアもすぐ後ろに続き、馬車に乗り込んだ。
馬車の扉が閉まると、ユリアは小さく息を吐いた。
――これから医局で残りの手当てを受ければ、クリック様は大丈夫。
そう信じて、彼女は前を見つめた。
馬車はゆっくりと街道を進み、王宮の門を越えていく。
ユリアの胸には、まだ緊張の余韻が残っていたが、その気持ちを握りしめながら、彼女はクリックの無事を願い続けた。
クリックは腹部を押さえ、苦しげにうずくまっていた。
その指の隙間から、大量の血が溢れ出している。
襲った男は逃げる様子もなく、クリックを見下ろしていた。
「おい。早くしろ!」
男が怒鳴り声を上げた。
ユリアは意味が分からず、思わず男を見上げる。
「……な、何をおっしゃっているのですか……?」
問いかけると、男は苛立ったようにユリアを睨みつけた。
「分からないのか? 早く治せと言っているんだ」
その言葉に、ユリアの胸が強く脈打った。
男とクリックを交互に見やり、ほんの一瞬、考え込む。
しかし、クリックの苦しげな呻き声にはっとして、再び傷口に目を落とした。
出血量は多いが、刃の入り方から見て、致命的に深い傷ではなさそうだ。
「クリック様、大丈夫です。傷は深くありません。すぐ手当ていたしますから」
ユリアはそう言って、自分の服の裾を裂き、腹部にきつく巻きつけた。
「……まさか、こいつ、本当に……」
男が独り言のように呟いたが、ユリアの耳にはほとんど届かなかった。
彼女の意識は、ただクリックを助けることだけに集中していた。
その時、後方からもう一人の男が現れ、襲撃した男に声をかけた。
「おい、人が来る。もう行くぞ!」
「だが、こいつ、まだ——」
「もういい。急げ!!」
バタバタッ
護衛たちが異変に気付き、こちらへ向かってくる足音が響く。
男たちはそれに気付くと、慌ただしくその場を逃げ去っていった。
「王妃様!! どうなされたのですか!?」
血相を変えた護衛騎士の一人が駆け寄ってきた。
「門番の男に、クリック様が襲われました。襲った男たちは、あちらへ逃げて……とりあえず、クリック様を——」
そう言いかけたところで、クリックが痛みに耐えながら身体を起こした。
「ユ、ユリア様……。おかげで出血は、ほぼ止まっています……。このまま市場の医局で、残りの手当てを受けますので……ユリア様は王宮に……」
「そんなこと、できません! 私も行きます!」
「ですが……」
渋るクリックを制するように、護衛騎士が口を挟んだ。
「とにかく参りましょう。他の護衛も呼びます。王妃様は我々がお守りしますので、ご安心ください」
護衛騎士はクリックを支え、馬車へと乗せた。
ユリアもすぐ後ろに続き、馬車に乗り込んだ。
馬車の扉が閉まると、ユリアは小さく息を吐いた。
――これから医局で残りの手当てを受ければ、クリック様は大丈夫。
そう信じて、彼女は前を見つめた。
馬車はゆっくりと街道を進み、王宮の門を越えていく。
ユリアの胸には、まだ緊張の余韻が残っていたが、その気持ちを握りしめながら、彼女はクリックの無事を願い続けた。