結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 少し歩いたところでシオドアに声をかける。
「ところでリンダさんは?」
「先に帰らせた。僕が戻るのに、一人でここに残しておくわけにはいかないだろう」
 それは彼女が慣れぬ場所で一人きりになってしまい、孤独を感じると思っているからか。それとも、一人になった彼女を誘おうとする男性がいると困るからか。
 シオドアとしては前者を心配しているのだろうが、彼女のあざとさがあれば、社交の場において孤独になるようなことはないはずだ。
 そう思いつつも「そうですね」と同意し、この場をやり過ごす。
 別邸はここから馬車で十分もかからないような場所にある。王都内にこれだけの屋敷を構えられるのだから、資金繰りが厳しいと言われようがやはり公爵家なのだ。
 私とシオドアの婚約期間中、公爵はそれとなく領地収入が思うようにいっていないと父に愚痴をこぼしていたようだが、そこから援助してほしいとか、そういった話には広がっていない。厳しい状況を訴え、父のほうから「援助しましょうか」と言わせたいのだろうと察した。父もそれとなく公爵の狙いには気がついていたようで、その言葉は決して口にはしなかった。
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