結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 それでもいくらかは融通したはずだ。それは、私がポーレット公爵家で教育を受けていたからで、授業料みたいな扱いになっていたと記憶している。そのお金が、どれだけ公爵家に影響を与えたかはわからない。
 馬車の中、シオドアと向かい合って座っているものの、私たちは始終無言だった。
 結婚式を挙げたばかりの二人とは思えないほどに、冷え冷えとした空間であり、馬車の振動だけが静かに響いていた。
 別邸についた私は、幾人もの侍女の手によって浴室へと連れていかれ、ドレスを丁寧に脱がされ、初夜に備えて湯浴みをする。身体中にこれでもかというほど香油をぬりたくられ、扇情的な夜着を着せられた。
 ガウンを羽織り、寝室で一人待つ。
 シオドアは渋々とこの場に来るだろう。リンダとの仲を続けるためにも、私との夫婦関係はそれとなく維持したほうが都合はいいだろう。だけど彼は、私との初夜は放棄するつもりのようだが、それはそれでかまわない。跡継ぎとなる子はリンダが生むとまで言っているのだから、私は名ばかりのロンペル子爵夫人として、必要最小限、この屋敷に目を配ればいいだけ。
 寝室にある天蓋つきの大きなベッド。そこにぽつんと一人、私は座っていた。物音一つせず、自分の鼓動が異様に大きく聞こえる。
 本来であれば夫との初めての夜を迎えるために、ドキドキと胸を弾ませながら待つものなのだろうが、私は違う意味で緊張していた。
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