結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「左様ですか。それが離れにいらっしゃる客人ですね」
 エマの顔からはすっと笑みが消えた。もしかして彼女は、シオドアが私を抱いた後、リンダのところへ行ったのだと思っているのではないだろうか。
「エマ。気にしないで。私と旦那様は白い結婚を貫くと、二人で約束をしたの。この結婚に愛など存在しない。あるのは互いの見栄だけよ」
 幸せな夫婦だと周囲に思わせ、そして裏では愛人との関係を楽しむ。
 だから昨夜、シオドアも一度は寝室(ここ)にやってきたにちがいない。そうでなければ、私のことなど放っておけばいいのに。
 つまり私は偽装妻のようなもの。となれば、シオドアにも偽装夫になってもらおう。私にまで愛人をすすめてきたのだから、それくらいのことをやってもらってもいいはず。
「奥様が納得されているのでしたら、私からは何も申し上げません。ですが、これだけは覚えておいてください」
 エマは私の手を両手でぎゅっと握りしめる。
「私は、何があっても奥様……イレーヌ様の見方です」
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