結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 彼が口を開くのを、私は彼の隣に経ちながら待っていた。そして一通り目を通したシオドアが、誓約書をパサリと返してきた。
「いいんじゃないか? 僕が言ったこと、すべて書かれている。後継は僕とリンダの子、その子の養育は妻である君が行う、そして僕と君の関係は真っ白なまま……」
 そこで口をつぐんだシオドアは、目を細くし、何やら考え込む。
「いや、もう二つ。内容を追加してほしい」
 彼からさらに提案があるというのは、予想外でもあった。
「君と僕、表面上は仲の良い夫婦を演じること」
「私たちの不仲を他の方には悟られないようにする、ということですね」
 確認のために尋ねたのに、シオドアはまるで私の声が聞こえなかったかのように、表情を変えず紙を睨みつけ、さらに付け加える。
「それから、お互い愛人との関係には口を挟まないこと」
「承知しました。では、離れにいるリンダさんは私の友人ということにしておけばよろしいですか?」
 リンダの名前を出せば、シオドアのこめかみがひくりと蠢いた。
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