結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。

5.

「俺に?」
「そうよ。お茶菓子。よければどうぞ」
 アーヴィンは目を丸くしつつも、籠の中から焼き菓子を取り出す。
「見たことのない包みだな。王都内の菓子店であれば、把握しているつもりだったが……俺のいない二年で、新しくできた店舗のものか?」
 その質問に答える気はなかった。彼はわかって言っているのか、それとも気づいていないのか。
「クッキー?」
 今さらながら、私が作ったとも言えず、彼がそれを口にするまでじっと見守ることにした。
「なんか、見た目は不格好だが……」
 わかって言っているのでは、と思えてきたけれど、反論せずにぐっと我慢する。不格好なクッキーを手にした彼は、それを一口かじる。
「んっ! 今まで食べたことない味だ。本当にこれ、どこの店のものなんだ?」
 彼はかじったクッキーの残りを、観察するようにまじまじと見ている。
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