結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 やっぱりあのとき、アーヴィンは始めのほうから私たちの話を聞いていたのだ。
 まるで私の考えを読んだかのように、アーヴィンは口元をゆるめる。
「そう、怒るなよ。あのときは様子をうかがっていたんだ。変なところで俺が邪魔をしても、シオドアが機嫌を損ねるだけだろう? どうやって効果的に彼を黙らせられるかを考えていたら、君がこちらのほうにやってきたからね」
「まぁ、あなたに文句を言いたいところだけど……結果的にはよかったと思っているから、私たちの話を盗み聞きした件は許してあげるわ」
 アーヴィンのまとう空気が、ふわりと動いた。
「だが、最後……表面上は仲の良い夫婦を演じることって、これはどういうことだ?」
「そこに書かれているとおりよ? シオドアからの提案なの。一応、体裁は気にかけているみたい。その割には、毎晩、リンダさんの元に行っているのだけれど。誤魔化そうとはしているようだけど、もう、近い人間にはバレバレなのよね」
 呆れたような私の声に、アーヴィンも苦笑を浮かべる。
「あのシオドアが、こんな小賢しいことを思いつくとはな」
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