結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「しばらくは、夜会にも私と出席するつもりらしいけれど……」
「そうなのか? それは残念だな。俺は君に誘われるのを待っているんだが」
 本心なのか社交辞令なのかわからぬ言葉に、微かな笑みを浮かべて誤魔化した。
 彼がそうやって甘い言葉を口にするたびに、私の胸には棘に触れたような痛みが走るのだ。
「そうね。きっと近いうちにそうなるのではないかしら? 今はまだ、シオドアと結婚して一か月も経っていないから……結婚式に足を運んでくださった方のためにも、表面上は彼と仲睦まじい振りをしておくわ。お互いのためにも」
「なるほど。だけど、その裏では俺との仲も深めてほしいな」
 彼の紫眼が私の心を揺さぶってくる。それから逃れるようにして目を伏せ、カップを手にした。外気に触れ少し冷めた紅茶は、先ほどよりも強い甘味を感じた。
「この紅茶、変わっているわね。せっかくだから、トリアスの話とかを聞かせてほしいわ。私、まだ他国には行ったことがないから」
「トリアスの話か……何も面白いことはないと思うが……」
「あるわよ。どんな食べ物が美味しいとか、どんなものが流行っているとか。あとは、国の雰囲気とか? 本当に教科書の通りなの?」
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