結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
第五章

1.

 唐突な質問に、クッキーを放り込んだ私の指先は震えていたかもしれない。ゆっくりクッキーを咀嚼し、私自身の考えも共にかみ砕く。
「ポーレット公爵家側から申し込まれたのよ」
「だが、君の家は中立派だろう?」
 強硬派か穏健派か。そして隠れて活動する過激派か。父、ロイル侯爵はそれのどこにも属していないのは事実だが、私とシオドアの結婚をそこと結びつけたというのであれば、アーヴィンもこの結婚の意味をわかっているのだ。
「そうよ。だから、父が財務大臣になるためにはそれを後押ししてくれるような人が必要だったの。ポーレット公爵であれば、間違いないでしょう? 前財務大臣なわけだし」
「ロイル侯爵は、そこまでして財務大臣になりたかったのか?」
 アーヴィンの質問は意地悪だ。父は、財務大臣という地位に固執していたわけではない。ただ、この国をよい方向へと導くためには、自分が財務大臣になるべきだと考えたにすぎない。
 私が言葉に詰まったのを見て、アーヴィンも「すまない、言い過ぎた」と顔を伏せてカップを手に取った。
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