結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「どうやら俺は、君の結婚については冷静に話ができないらしい」
 互いに言葉を呑み込み、お茶を飲んだりお菓子を摘まんだりと、との場をやり過ごす。
 さわっと心地よい風が吹きつけ、テーブルの上の花を揺らしたところで、私は意を決する。
「あなたの言うとおりかもしれないわ。父は、そこまでして財務大臣になる必要があったのよ」
 アーヴィンは意外だとでも言いたげに、目を瞬いた。
「シオドアとの婚約が決まったのは二年前。父が一年前に財務大臣に任命されたとき、ポーレット公爵……義父から言われたのよ」
「何をだ?」
 アーヴィンはさりげなく身を乗り出してきた。
「財務大臣候補はもう一人いるけれど、その人は過激派の人らしいから、彼を財務大臣にしたくなかったんだって。あのときはお酒も入っていたから、義父もつい、口が滑ったんだと思うけれど……」
 そうだ、父が財務大臣に決まったとき、ポーレット公爵邸でささやかな食事会を開いた。私とシオドアは婚約中の身だし、そんな食事会が開かれたっておかしくはなかった。ただ、公爵はよっぽど嬉しかったようで、お酒の力もあってか、顔を赤らめながら力説していた。父は曖昧に笑って、その場を取り繕うとしていたけれど。
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