結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「なぁんだ。意地悪だってわかっていたってことは、そういうことね」
 私もエマに負けじと微笑み返し、白磁のカップに手を伸ばす。
「奥様。私は隣の部屋におりますので、何かございましたらお呼びください」
 エマはドレスの手入れをするために隣の部屋へと向かったが、それはきっと、私が一人になりたいというのを察してくれたからだろう。
 エマとのおしゃべりは楽しいし気分転換にもなるけれど、今のようなときは気疲れしているのは事実。エマは敏感にもそれを読み取ってくれたらしい。
 差し込む太陽の光は部屋の奥へ、奥へと向かおうとしており、アーヴィンと笑い合った時間が嘘のように、今は静かである。
 両腕を伸ばしてソファに寄りかかって目を閉じると、手の甲を瞼に押し当てた。
 疲れた。
 相変わらずリンダとはどう接したらいいかわからないし、シオドアには何かを期待するだけ無駄。
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