結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 それでも愛を誓い合った夫を見間違えるはずもない。なめらかな金色の髪、切れ長の青い目に整った鼻梁。私の瞳に合わせた琥珀色のタキシードは、人がたくさん集まった中でもひときわ目立っていた。今も月光を浴びて、薄闇のなか照らされている。
 呼びかけた声に反応した彼は、相手の女性と唇を離したものの、その手はしっかりと彼女の腰を抱き寄せていた。
「あぁ、イレーヌか。どうかしたのかい?」
 どうもこうもない。私たちは数時間前に永遠の愛を誓い合った仲だと思っていた。そして今まさに、集まった人々に私たちの喜びの姿をお披露目していたのだ。
「そちらの女性はどなた?」
 感情を押し殺し、ゆっくり尋ねた。胸の奥で何かが軋むような痛みが走り、心臓がうるさいくらいに激しく音を立てている。
「あぁ、イレーヌ。紹介しよう。こちらの女性はリンダ。僕の愛人だ」
 愛人。つまり愛する人と解釈して間違っていないだろうか。頭が混乱し、目の前の光景が現実なのかと疑ってしまう。
「そう……。でも今日、あなたは私と結婚をしたのよね?」
 声が震えそうになるのを必死に堪えた。
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