結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 薄く笑みを浮かべた私は、当たり障りない言葉を並べ立ててから、義母のところへと戻った。
 シオドアは誘われ撞球場へと行っており、この場に姿は見当たらない。もちろん撞球場には、義父もいるはずだ。
「男の人は、すぐに玉突きに行ってしまうのよ?」
 グラス片手に不満げな様子の義母は、酒に酔っているようにも見える。義母は酒にはあまり強くなく、普段であれば義父がそばにいて酒の量を見張っていたはずなのに、こういうときに限って撞球場へ行ってしまうとは。
「お義母様、飲み過ぎではありませんか? お義父様の目がないからって、羽目を外してはダメですよ」
 おどけた口調で言い、義母が手にしているグラスを取り上げ、代わりに葡萄水のグラスを持たせた。
「うるさいのがいなくなったと思っていたのに」
 義母の言ううるさいのとは、間違いなくポーレット公爵のことである。
「ロンペル子爵夫人」
 声をかけられ、私が振り返ると、同じように義母も顔を向ける。
「あら、アクラー公爵夫人ではなくて?」
 相手を確認したところで、義母の顔が引きつった。義母はアクラー夫人と仲が悪いわけではないのだが、何かと張り合ってくるため
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