結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
疲れるとぼやいていた相手である。
「てっきり、マダムコールの新作ドレスだと思って期待していたのに」
 アクラー夫人は、私の姿を値踏みするかのようにねっとりと視線を這わせてきた。
「マダムコールの新作? いったいどういうことかしら?」
 お酒で酔っていたはずの義母の表情が引き締まり、声色も冷え冷えとする。
「あら? ポーレット公爵夫人は、ご子息のことを知りませんの? 噂のマダムコールの新作ドレスを愛する女性のために仕立てたそうですよ?」
 ここでもシオドアとマダムコールだ。それだけシオドアも、マダムコールも注目されている人物である。
「それなのに、今日は……」
 そこでアクラー夫人は私に向かってにっこり微笑み、何か言いかけようと口を開きかけたとき、ミュゲ夫人の明るい声が響いた。
「まぁまぁ、みなさん、こんなところに集まってなんのお話かしら?」
「マダムコールのドレスの件ですわ。ミュゲ夫人も楽しみにしてらしたでしょう?」
 アクラー夫人はすぐにミュゲ夫人に向き直り、まるで味方を得たと言わんばかりに、表情を明るくする。
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