結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「それは、内緒の話なのよ。みなさん、シーですわ」
 ミュゲ夫人が唇の前に人差し指を立てると、アクラー夫人も眉をひそめる。
「子爵は驚かせたいのよ。だから、私たちがここで話題にする話ではないのです」
 ミュゲ夫人がそう言ったところで、この話題は終わり。
「申し訳ないけれど、少し飲み過ぎてしまったみたいだわ」
 急に弱々しい声をあげた義母は、頭を押さえる。
「お義母様? 少し休憩なさいますか?」
「ポーレット公爵夫人、休憩室に案内しますわ」
 私も味方を得たと言わんばかりの笑顔をアクラー夫人に向けて「失礼いたします」と頭を下げる。
 しかし、その余裕の笑顔は偽りのもの。心の中では「とうとう始まった」と、冷静に判断している自分がいる。
 ここから「シオドアが愛人のリンダに熱を上げ始めた」「やはり結婚生活も三か月過ぎれば、夫婦生活は破綻する」と、そんな噂が広がっていくにちがいない。
< 209 / 218 >

この作品をシェア

pagetop