結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 根も葉もない噂だと割り切れればいいが、事実なだけにどう対処すべきか、それは私の技量が問われるところかもしれない。
 ミュゲ夫人に案内された休憩室で、義母はソファに上半身を預けた。このパーティーの主役ともいえるミュゲ夫人は、「必要なものがあれば使用人に命じてくださいな」と言い残して、会場へと戻っていった。
「お義母様、葡萄水を用意していただきました」
 テーブルの上にはグラスとポットが並んでおり、ポットの中身は、さわやかな葡萄水が入っている。
「えぇ、ありがとう。それよりもイレーヌ、あなた、シオドアからドレスを贈ってもらったの?」
 ここでも話題はマダムコールのドレスだ。
「いいえ、残念ながら。ミュゲ夫人は、シオドアが私を驚かせるために内緒にしているのだろうと思ってくださったようですが……」
「やっぱり、あの噂は本当なのね」
 ため息と共に言葉を吐き出す。
「噂……? どういった?」
 トクンと私の心臓が震える。くるべきときがきたと、覚悟を決めるときなのかもしれない。
「あなたたちの不仲説……とまではいかないけれど、シオドアはあなた以外にも女性がいるのでしょう?」
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