結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 私から顔を背けた義母の表情を探ることはできないが、その声には呆れと諦めが入り交じっていた。
 なんて答えたらいいか、一瞬、迷ったものの、ここまでバレているなら今さら取り繕っても意味はないだろう。
「……はい」
「そう」
 はぁ……と、わざとらしいくらいのため息をついた義母は、そのまま黙り込んでしまった。
 三か月の倦怠期、三年目の浮気とはよく言うけれど、そもそも私とシオドアの結婚は形だけのもので、そこにお互いの気持ちは皆無。となれば、倦怠期でも浮気でもなく、互いに新婚夫婦を演じるのに疲れてしまっただけ。いや、シオドアにいたっては私の顔を見るのさえ嫌なはず。いくら表面上は仲の良い夫婦を演じるという誓約書があったとしても、嫌なものは嫌で、そこに理屈など存在しない。
 もう一度大きく息を吐いた義母は、ぽつぽつと言葉を続ける。
「あなたも公爵家に嫁いだのならば、覚えておきなさい」
 何を言われるのかと、つい身構えてしまう。
「公爵家の名に泥を塗るような行為は慎むように。浮気をしようが他に愛人を持とうがかまわないわ。だけど、それを醜聞のネタにされることなく、周囲には悟られないように振る舞いなさい。シオドアにもそう伝えるよう、あの人にも言っておくわ。だけど、夫の手綱を握るのは妻の役目よ」
 義母の言葉をかみ砕きながらも、私は「はい」と消え入るような声で返事をした。
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