結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 そしてすぐに、自分でボトルから酒を注ぎ入れると、解けずに残っている氷を人差し指でちょんちょんと押し、指についた液体をペロリと舐め取る。
「それで? 自分を隠せってどういうことですか?」
 酔いも回ってきたようで、シオドアの頬が赤味を帯び始めた。
「イレーヌの他に、女がいるのだろう?」
 指摘されるとは思ってもいなかったのだろう、唇の端をひくりと歪める。
「別に咎めているわけではない。それをやめろとは言っていないだろう?」
 公爵はグラスに口をつけると、濡れた唇で不気味な笑みを作る。
「やるなら、もっとうまくやれと言いたいだけだ」
 傾いた太陽が差し込む室内は橙色に染まり、穏やかな時間が流れているはずなのに、公爵の周囲だけは冷たい空気が漂う。
「父さん……?」
 何を言われたのか理解できていないのか、シオドアは不安げに眉根を寄せた。
「愛人を持つなとは言わない。浮気するなとも言わない。女遊びについて咎めるつもりもない。ただな……」
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