結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 意味がわからないというように目を瞬く息子を見れば、ポーレット公爵も頭が痛くなってくる。
「イレーヌはおまえが愛人を持とうが何も言わないのだろう? だから離れに住まわせていることもうるさく言わない。だがな、周囲の目はそうではない。おまえが浮気しようがどうしようとかまわないが、公爵家の名を貶めるような行為だけは慎め」
「それとドレスがどう関係するのですか?」
「おまえが有名店でドレスを仕立てたというのが噂になっている。それなのにイレーヌはそのドレスを身につけていない。それがどういうことか、勘のいい者はすぐに気づく。だから、同じ店でドレスを二枚仕立て、店主には金を包んで口止めをする」
 シオドアが硬く唇を噛みしめる様子を見れば、そんなことも考えつかなかったのだろう。だから、詰めが甘いというのだ。
「まあ、いい。私のほうで用意しておこう」
「何をですか?」
「イレーヌのドレスだ。おまえからということで、私から手配しておく。だが、おまえに手を貸すのはこれっきりだ。あとは自分でうまいことやれ」
 息子に手を貸すのは、息子かわいさゆえと思われるかもしれないが、ポーレット公爵の思惑は別のところにある。
 もちろん、イレーヌがシオドアと別れないようにするためだ。彼女の実家のロイル侯爵家は、国内でも有数の鉱山を所有しており、あれをうまく利用すれば多額の資産が転がり込んでくる。いつかはその鉱山を公爵家側に取り込もうと、虎視眈々と狙っていた。
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