結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 だからそれが叶うまではイレーヌをこちら側にとどめておく必要があるのだ。
「イレーヌと仲良くしろとまでは言わないが、彼女に愛想を尽かされるようなことはするな」
「あぁ……そのイレーヌのことで父さんに相談があったんです」
 そう話を切り出したシオドアの顔は、先ほどよりも赤らんでいる。お酒も身体中に回って、気分も高揚しているにちがいない。
「イレーヌがロンペル子爵領に足を運びたいそうです。領主となったのであれば、一度くらいは領民に顔を見せるべきだと」
「その言い分は間違いではないな」
 ポーレット公爵だって、年に一度はその地に足を向けていた。面倒だとは思いながらも、地道な活動はこれからの未来へと生きていくものなのだ。
「ですが、僕は行きたくないんですよね……」
 シオドアは、アルコールを孕む息を吐き出した。
 この後に及んで何を言うのか、我が息子ながら情けない。呆然としつつも、怒りも静かに込み上げてきた。
「行きたくない理由はなんだ?」
「リンダがいるからです」
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