結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 私よりもエマのほうが楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
「そんなに気を使わなくていいわよ。前のお茶会のときのように、少し離れた場所で私たちの様子を見ていてもらえれば」
 それに変装していくから、私とアーヴィンが一緒にいても、誰も気づかないだろう。
 それゆえのこっそり視察なのだ。
「アーヴィンとはゆっくり話がしたくて……」
 頼まれていた帳簿の件、そしてそこにあった違和感。それを彼に相談したいのだ。
「わかりました。ではマルクスには、私のほうからうまく言っておきますから」
「えぇ、マルクスのことは頼んだわよ?」
 エマがニヤニヤして言うものだから、私も同じようににやけて答えると、なぜか笑いが込み上げてきて、二人で声をあげて笑い出してしまった。
 アーヴィンには、こちらに来る前に手紙を出し、数日の間、領地に滞在する旨を連絡していた。すると彼のほうから、領地を一緒に見て回らないかと誘いがあったのだ。
 私も一度は領内をこの目で見ておきたかったし、シオドアは乗り気ではなかった。となれば、アーヴィンの誘いにのって、こっそり領内を見て回ろうと考えたのだ。
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