結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
第二章

1.

「シオドア・ポーレットと婚約したというのは本当なのか?」
 アーヴィンの声が、私の胸に痛みを与える。
「えぇ。二年の婚約期間を経てから、結婚する予定なの」
 できるだけ平静を装うと努めてみるけれど、手先は震え血が通っていないかのように痺れていた。
「どうして?」
 アーヴィンが私の肩を力強く掴んできたから、驚いて顔をしかめると「ごめん」と彼は言う。
「どうしてって……父がそう決めたから」
「だが、相手はあのシオドアだぞ?」
「わかってる、あのシオドアよ? だけど、向こうから縁談を申し込まれたら、こちらから断れるわけがないでしょう? 相手は公爵家だし……」
 だから父は「すまない」と、謝罪の言葉を私にかけたのだ。
「……そうか」
 沈黙が落ちた。降り注がれる太陽のまぶしさが埃を光の粒子に変えている。
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