結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「母さん、大きな声を出さないでください。昨夜、遅かったんですから」
 シオドアが使用人に目配せして、お茶の用意をするよう命じている。
「今まで彼女の衣装を決めていたのでしょう? だったら僕は不要では? そろそろ終わった頃だと思ったから来たんですよ」
 私たちの向かい側に足を投げ出すようにして座ったシオドアは、大げさに肩をすくめた。
「そうね、イレーヌさんの衣装はほぼ決まったわ。あとはあなただけよ」
「だったら、ちょうどいいですね。彼女の衣装に合わせて決めればいいのでしょう?」
 そう言ったシオドアはジロリと私を一瞥し、ふっと息を吐く。
「彼女に似合うような衣装があったんですか?」
「えぇ。仕上がりがとっても楽しみだわ」
 はしゃぐ夫人に、シオドアは鼻で笑う。
 シオドアは、魔女のような私に似合う衣装が存在するのかと言いたいのだ。
 今の言葉は、先ほどよぎった前向きな考えを打ち消すくらいの威力があった。
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