結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「でもイレーヌさん、本当に帰ってしまうの? この時間なら一緒にお夕食でも……」
 公爵夫人からの誘いは嬉しいものだが、シオドアの目が「早く帰れ」と言っている。私がいればゆっくり休めないからだろう。
「母さん。あまり引き止めるものでもありませんよ。結婚すれば、彼女はポーレット家の一員になるわけです。ロイル家の家族と一緒に過ごす時間だって残り少ないのですから、大事にしたいでしょう?」
「そうね、シオドアの言うとおりね」
 それでも夫人は寂しそうに微笑んだ。
 ポーレット公爵家はシオドアの下に弟が二人いて息子しかいないから、私が公爵邸に来るのを楽しみにしていたと、夫人はいつも言っている。ありがたい話だし、私も公爵夫人の言葉は素直に嬉しいのだが、いかんせんシオドア本人が問題なのだ。
「シオドア、しっかりイレーヌさんをお送りするのよ」
「わかりました」
 シオドアがエスコートするかのように腕を差し出してきたため、私は少し戸惑いつつも彼の腕を取った。
「では、彼女を送ってきます」
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