結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「本日は、お招きいただきありがとうございました」
 これは公爵夫人を安心させるための演技だと自分に言い聞かせて、笑顔を作った。
 帰りはポーレット公爵家の馬車で送ってもらえることになった。
 カタカタと静かに走る馬車の中、シオドアは私の斜め前に座っている。
 閉ざされた空間で、いくら結婚を約束した仲であっても、気持ちがすれ違っている相手とどのように接したらいいのかがよくわからない。
 婚約が決まってからというもの、定期的にお茶会だといって彼とお茶を飲むような時間はあったが、それはサロンやガセボなどもう少し広く開放的な場所であり、近くには使用人の姿もあった。
 だけど今は違う。公爵家に向かったときはエマが同行してくれたが「帰りは送るから」という公爵夫人の言葉で、先に帰ってもらったのだ。だから今は、本当に二人きり。
「君は、僕との結婚に納得しているのか?」
 不意にシオドアが私に問いかけてきた。
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