結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「あぁ、イレーヌか。どうかしたのかい?」
「そちらの女性はどなた?」
 私が尋ねれば、彼は「こちらの女性はリンダ。僕の愛人だ」と堂々と答える。
 一瞬、目の前が真っ暗になり現実を受け止められなかった。これから彼との愛を育めたら、とそう思っていたというのに。
 私はできるだけ平静を装い、淡々と言葉を続ける。
「私と結婚したその日のうちに、愛人と愛を深めていた。そういうことで合っておりますか?」
 目の前の現実を確認するために尋ねてみれば、彼は胸を張って「そうだ」と答える。さらに、私との初夜の儀すら放棄し、愛人リンダとの子をポーレット公爵家の後継にしたいとまで言ってきた。
 それは私にとって、なんの利点があるのだろう。
 すっと息を吸い、悲しいとか悔しいとかそいう感情もすべて抑え込む。
「片方はあんあん喘いでいるのに、こちらだけ重責を負うのは不公平ではありませんか?」
 はしたない言葉遣いだとは思いつつも、言わずにはいられなかった。
< 82 / 141 >

この作品をシェア

pagetop