結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「後悔するくらいなら、どうして気持ちをぶつけなかったんですか? あの様子を見ていたら、イレーヌ嬢だってまんざらじゃないことくらいわかるでしょ?」
 テロス展で彼女が身にまとっていたドレスはアーヴィンの瞳の色と同じものだった。本人たちは、気づいていたのかいないのかわからないところが、じれったかった。
「やめろ!」
 バン! と机を両手で叩いたのはアーヴィンである。その衝撃で机の上の物は軽く跳ね、ペンは転がって床に落ちた。
「黙れ! セリウス。いくらおまえでも言っていいことと悪いことがある」
「僕に本当の気持ちを指摘されたからだ。悔しくてそうやって物に当たって、怒りをぶつけている。そうするくらいなら、イレーヌ嬢を奪えばいいのに」
「いっときの感情を彼女にぶつけても、迷惑になるだけだ。シオドアとの婚約を断れとでも言うのか? 格下のロイル侯爵家から断るなんてできるわけがないだろう? それに……」
 そこでアーヴィンは表情を硬くする。
「ポーレット公爵がロイル侯爵側についてくれれば、次期財務大臣はロイル侯爵だ」
< 89 / 141 >

この作品をシェア

pagetop