結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 イレーヌは王国の歴史書をかなり読みあさっていたようで、千年以上も前に王族特権が内規として定められたときの背景を知っていた。今となっては知っている者も一部であるし、それだっておとぎ話だと言って信じない者も多い話である。それを行使した者など、記録に残っているかぎり誰もいない。だから彼女も、知っているといった程度のものであった。
 とはいえ、アーヴィンが王族特権について知らなかったのは、間違いなく父王の力が働いている。我が父ながら、あの腹黒さはどうなのかと首をひねりたくなるのだ。
「王族特権の略奪婚ですが……」
 遙か昔、この国の王子が運命の女性と出会うのが遅く、彼女がすでに結婚していたのが発端だ。
 王子はその事実に嘆き悲しみ、自ら死を選んだ。女性のほうは、婚家で冷遇されており酷い生活を送っていたが、それでも離婚できずにいたのは、家の関係によるもの。
 また相手の女性も王子の好意には気づいており、いつかはこの酷い生活から救い出してくれるのではないかと期待していた矢先のできごとだったらしい。
 さすがに王子は、結婚している女性を奪うことには躊躇いがあったようで、彼女が正式に離婚してときには思いを伝えようとしていたのかもしれない。
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